自由に思いを綴る場所

谷本有香のエッセイやコラムなど。

仕事や現代の社会、経済ビジネスのこと、日々の出来事など幅広く自由に綴っていきます。

W.I.N Conferenceに参加してきました

イメージ

先日、ヨーロッパを拠点としているW.I.N(Women’s International Networking)という団体の、日本初のカンファレンスにファシリテーターとして出席してきた。
出席者は世界各国から集まった、まさにグローバルに活躍する女性たち。
グローバル大企業のトップや、メディアに取り上げられる有名女性ばかりで、会場に入っただけで大興奮、刺激を受けない人は誰もいなかったのではないか。
そんな会場の女性たちは、皆、驚くほどポジティブで、楽しくフレンドリーで、一緒にいるだけでパワーをチャージできそうな方々だ。
女性だけの団体が開くイベント(現実には、男性も沢山いらしていた)というと、「女性は社会で迫害されている!女性の地位の向上を!!」というような過激なフェミニスト団体を想像する方もいらっしゃるかもしれないが、全くそんな雰囲気は存在しない。
皆、企業のトップまで上り詰めた方々である。恐らく色々なご苦労もあったのだろうけれど、微塵ともそれを見せず、真夏のひまわりのように笑顔を絶やさず、まぶしい女性たちで、本気で世の中をよくしようと考えている。
ロールモデルという言葉があるけれど、それは、「私は苦労をこんなにしてきたんです。こんなに戦ってきたんです・・」という苦渋がにじみ出ているような人よりも、それを隠し、純粋に憧れを抱けるような幸福感に満ち溢れている人の方が、それに適しているし、実際、そうなっているといえるのかもしれないと、世界中の女性のロールモデルと呼ばれる彼女たちを見ながら思っていた。

今回の参加者は外国人の方や、外資系企業からいらしている方が多かったことから、パネルディスカッションでは、いわゆる「日本の事情」を踏まえないダイバーシティ論やワークライフバランス論になるのでは、と心配していたが、そんなに大きく見当はずれなものに傾くことなく、むしろ、その事情を勘案した、基本を互いに確かめるような内容になって安心した。
私も外資系企業と日本企業を両方に在籍してきた人間として、同じ日本にありながらも、この二つには女性における環境として、いまだ大きな隔たりがあるといってもいい。
いまだ日本企業全体で見てみれば、女性管理職の割合を増やす、だとか、育休やダイバーシティ推進などの専任組織を作る、といった制度づくりの段階にあるような気がする。
カルビーの松本CEOもおっしゃっていたが、Understanding(理解)→Agreement(同意)→Implementation(遂行)の3段階があるとしたならば、とりあえず、トップの意思でもって初めてみないと、つまり、制度づくりの段階を経なければ次にいけないし、何も変わらない。
だからこそ、まだ制度作りの段階だといっても、ちゃんと進んでいるではないかという考え方もある(ちなみに、この日本でこのまま普通にやっていったら、このImplementationまでいくのに100年はかかるとおっしゃっていた)。

ただ、実行まで行ったからといって、それでよしとしてはいけない。
よく取り上げられている「女性が働きやすい会社ランキング」があるけれど、私はそのランキング上位の会社の社員から、ダイバーシティ面において、現場の不満の声を聞くことがよくある。
つまり、このランキングは、制度が整っている企業ランキングであって、それというのは、必ずしも女性、もしくは男性にとって、本当の意味で働きやすい職場になっているかどうかとイコールではないということなのだろう。
やはり、制度を整えていくというのは、その過程で、現場での不平等性や、理不尽なことや、しわ寄せなどが出て、不満が噴出する。
しかし、このプロセスを経て、次のステップ、実際にダイバーシティやワークライフバランスを推進することが、「企業の利益」につながるようにしなければいけない。
そうすれば、その一時的な不満や犠牲を払った人たちも報われるというものだ。

しかし、これらの制度を進めていくうえで、日本的な特徴が、それを阻害していることも考えておかなければならないだろう。
例えば、ワークライフバランスを導入するのでも、この手の先進国たる欧米とは文化的背景が違うことをきちんと考慮した上で、制度を日本企業にあうように最適化しなければいけない。
ワークライフバランスというと、労働時間を短縮したり、自己啓発支援を実施したり、そのプログラムを受ける際の短時間勤務制度をつくったりする事例もあると思うが、ややもすれば、働かない人を正当化する方向に動いてしまうことはないだろうか。
本来、ワークライフバランスは仕事全体を効率化するため、または、優秀な人材をつなぎとめる/採用するためなどにある制度の筈だ。
だからこそ、名目上は、バリバリプライベートも削って働いている人に、時間に余裕を作ってもらって、その結果、生まれた効果を仕事に還元してもらうというような考えでもあったように思う。
しかし、実際はどうか。
残念ながら、日本企業は外資系と違って、時に、どうせ同じ賃金なら働かない方が得だというインセンティブが働くことも忘れてはならない。
よって、普段から全く働かない人が、企業のワークライフバランスの掛け声のもとに、堂々と「さぼる」ということにもつながらないかチェックが必要だ。
また、世間でいわれているように、今の若い人たちは、自分の趣味やプライベートの時間は確保したい、というようなワークライフバランス的思考を既に持ち合わせている。
そんな彼らには、時に「ワーク」の比重を高くすることの重要性も教えなければならないのに、恐らく、今の日本においてこの制度は、「ライフ」をいかに「ワーク」の中に取り込んでいくか、という理解になっているような気がする。

まだまだ、日本におけるこの手の制度が実を結ぶのには長い長い道のりが想定される。
しかし、うまく制度を使いこなせば、必ず日本の経済に寄与する筈だ。
鍵は、いかに制度自体を日本化、もしくは、その企業に適した形にカスタマイズできるかだ。
そんな中で、企業トップは優秀なカスタマイザーでなければならない。

ページトップに戻る