やじ問題 一番の悪者は誰だ
あれほど加熱していた東京都議会のやじ問題もどうやら幕引きと相成ったようだ。
やじを言った張本人も特定できたし、謝罪の言葉も聞けたし、国民の怒りの矛先もおさめやすい状況になったということもあるのだろう。
しかし、この問題は当然終わってもいないし、そもそも終わるような類のものでもない。
ただただ、日本の一側面がそのまま露呈されたに過ぎない。
安倍首相が世界へ向けて発信した「ウーマノミクス」。
成長戦略の中核をなすとまでおっしゃっている。
矢継ぎ早に出された成長戦略には、外国人投資家が好みそうなキーワードを盛り込み、かなり外を意識した発言のようにも見える。ご自身の政権の内に、国際社会においての日本のプレゼンスを高めたいという思いも、そして、海外からの投資を集めたい、もっと直接的に言えば、株価を上げたいという思いも強くていらっしゃるのだろう。
ただ、海外の反応はどうなのだろう。
安倍首相の本気度は今後の具体的施策やその結果の検証によって評価されていくことになるのだろうが、やや海外からは冷やかさをもって見られているような気もする。
特に女性活用の問題に関しては、法人税を何%下げるというようなことよりも、思想や文化的傾向、固定観念を変えるということにも繋がり、その抜本的な変革が難しいということが想像できる。
日本のジェンダーギャップ等の国際的統計により、日本の女性を巡る状況は世界の共通認識と既になっている。
だから、今回のやじ問題だって、海外でも今更さほどに驚くこともないのだろう。
今回のこの「やじ問題」は、多くの国民の怒りを買った。
確かに酷い内容だし、論評にも値しないものであることは確かだ。
しかし、そのやじを飛ばした人間を批判できる人がどれ程いるのかと思う。
私は、当然この行為は許されるものではないとは思う一方、ある意味において、悪意をもって、または意図をもって相手を愚弄する方がまだマシなのではないかと思うところもある。
何故なら、もっと深刻だと私が感じるのは、無意識のうちに、または良かれと思って、実のところ相手にハラスメントを与えているという事実がいまだ私たちの周りで多数起こっていることである。
面接の際、相手が男性だからと言って気を許して「なんで結婚しないのですか」と聞いてしまったことはないだろうか。
妊娠したと部下に報告を受けて、ついマネジメントの立場で困った表情をしてしまったり、その愚痴を第三者に話してしまったことはないだろうか。
クオータ制で昇進しようとしている女性社員に対して、能力が足りないのにと思ったり、それを口にしてしまったことはないだろうか。
勿論、「産めないのか」というレベルの発言ではないかもしれない。
しかし、これは十分に相手を傷つけるに値する。
実は、こういう当たり前と思ってやっていることや、認識の積み重ねが、あの「やじ」のような形に繋がっていっているような気がしてならない。
これは当然、男性だけの問題ではない。
私自身も思い当るふしがある。
自戒を込めて言うけれど、本当に一人一人の認識が基礎部分から変わっていかなければ、この国は変われない。