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読書の秋~「マーケティング」に思う~

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本を選ぶ基準として、ベストセラーであるとか、著者が好きだとか、知的好奇心を満たしてくれそうだとか、色々あると思うが、私の場合、尊敬する人が薦めているという事が一番効果的であるようだ。
彼らが直接、または間接的に「この本はいい」と言っているのを知ったら、それを買わずにはいられない。
そうこうしているうちに、我が家にはまだ読んでいない「尊敬する人たちの推薦図書」が山積みとなっている。
これから一冊一冊、彼らの顔を思い浮かべながら、読書を楽しんでいきたいと思っているが、この山を読破するのは一体どのくらい時間がかかるだろう。
しかし、この山を少しずつ崩していくのは、今から心が躍る思いでもある。

そんな中、一冊の本を“今の私に必要だと思うから”と薦められて読んだ。
「こころを動かすマーケティング」。
日本コカ・コーラの会長でいらっしゃる魚谷雅彦氏が著した書である。

今の私にマーケティングの本が必要?
正直、訝しい思いを抱きながら書籍を購入したことをここに告白しなければならない。
マーケティングといえば、私自身、ビジネススクールで学び、知識としては知っているつもりだ。
マーケティングとは顧客のニーズをくみ取り、売れる製品やサービスを作り出す一連の活動の事ではないのか?それを今の私のポジションで使うところなどあるのだろうか?と思っていたのだ。

しかし、読み進むうちにその考えがいかに間違っていたかを思い知らされた。
マーケティングとは市場調査のことではない、プロモーションの事でもない、モノを売るための活動という単純なものでもない、いかに「人の心を動かすか」「人に喜んでもらえるか」「人を感動させるか」を作り出す仕組みなのだ。
そうであるならば、それは全ての仕事、全ての人に当てはまる。

「いいモノやサービスを提供できていれば売れる」―。
これは完全に売り手のエゴである。
クオリティが高かろうが低かろうが、「価値」は使い手が決めるものだ。
しかも、この豊かになった時代において、表面的な「良さ」だけではもはや通用しない。
そこには、心が動かされるストーリー性が求められるだろうし、一般性ではなく、そのモノ・サービスと自分という「個」の間に密接的な関係性を求められる事もあるだろう。また当然、特別感や稀少性、信頼性や一貫性も必要だ。
そして、それは時代によって、地域によって変わってくる難しいものでもある。

目先や小手先の良さだけを追求していると、これからの時代は足元をすくわれる事になるかもしれない。
魚谷氏も指摘しているが、やはり何よりも、自分たちの顧客を満足させるためには、まずは自分たちが納得できるものをやらなければいけない、自信が持てることをやらなければいけないと思う。なぜなら、社員自身がその企業、ブランド、サービスの一ファンになることで、そのブランド力というものは格段の広がりと信憑性と説得力を持つ事になる筈だからだ。
だからこそ、経営者はまず顧客の前に、社員を感動させ、心を動かす取り組みをしなければならない。
つまり、経営にもマーケティングの力が必要になるということだ。
マーケティングは必ずしも、顧客の為だけにあるものではない。

「マーケティングとは人生そのものだ」、と魚谷氏はおっしゃる。
そうかもしれない。
人に喜んでもらえるような生き方、人の心を動かす仕事、人に感動を与えられる人間。
これらが溢れる社会は、なんて素敵だろう。

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